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腰椎椎間板ヘルニア

図1 椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

 

腰下肢痛の原因として、とくに若年者では多いもののひとつです。

 

しかし、腰痛=椎間板ヘルニアではありません。腰痛の原因は椎間板ヘルニア以外にも椎間板症椎間関節症、筋筋膜性腰痛症、仙腸関節症など多岐にわたります。

 

典型的な椎間板ヘルニアは腰痛だけではなく下肢(脚)の痛みやしびれを伴います。

イラストのように椎間板の中身(髄核)が椎間板の外に張り出して下肢を支配する神経根を圧迫します(図1)。

図2 神経根炎が痛みの原因

髄核と接触した神経根に炎症が起きると(図2右)その神経根の支配する領域(下肢)に痛みや感覚障害・筋力低下が起こります。

 

逆に炎症が治まると(図2左)痛みは消失し、感覚や筋力も回復に向かいます。ヘルニアがそのまま残っていても、です。

 

すなわち、神経は単純な圧迫だけでは痛みを起こさないし、機能障害も来さないのです。

 

圧迫に加え、炎症や血流障害が起こってはじめて症状が出現するのです。

手術以外の保存的治療は、このような神経の炎症や血流障害を軽減、消失させることにより効果を発揮します。

椎間板ヘルニアそのものを手術で取り除かなくても、多くの場合は治癒するのです。そして、残ったヘルニアも数ヶ月~数年をかけて徐々に吸収され縮小・消失する経過をたどります(ヘルニアのタイプにより縮小のスピードは異なります)。

 

ペインクリニックで行われる硬膜外ブロック神経根ブロックは、椎間板ヘルニアによる神経根の炎症部位に直接薬液が及ぶことにより強力な治療効果を発揮します。

図3 椎間板ヘルニアの神経ブロック療法

椎間板ヘルニアの神経ブロック療法

 

腰椎椎間板ヘルニアにより生じた神経根炎は腰下肢の支配領域に痛みと感覚障害、筋力低下をもたらします。

 

手術以外の保存的治療は、この神経根炎を軽減することが目標になります。

 

内服薬主体の薬物療法は消化管より吸収されたクスリが血流に乗って全身に広がり、そのごく一部が病変部位に到達します。

 

したがって効率は悪いし、必要のないところにクスリが作用して副作用をもたらすこともあります。

 

これに対し、神経ブロック療法は病変部位に直接薬液を作用させることが可能で、効率よく治療効果を発揮します。

 

クスリの吸収・全身への分布というプロセスを経る必要がないので、使うクスリは少量で済み、他の部位への影響も最小限に抑えることができます。

 

硬膜外ブロックは椎間板ヘルニアが存在する脊柱管内部に直接薬液を注入します(図3左)。

 

神経根ブロックは炎症を起こした神経根そのものに薬液を作用させます(図3右)。

 

これらの神経ブロックを組み合わせ、反復することで神経根炎は徐々に軽減し、痛みや機能障害も軽減・消失の方向に向かいます。

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