腰椎椎間関節症

椎間関節の痛み

 

「椎間関節」は聞き慣れない用語かもしれませんが、腰痛の発生源としては椎間板と並んで非常に重要で、体動時の腰痛に大きく関与しています。

 

椎間関節は脊椎の後方、左右にある小さな関節です。

前方にある椎間「板=disc」も椎骨同士の動きをもたらす機能を持つことから一種の関節と考えられており、後方左右の椎間「関節=joint」とともに三関節複合体( three-joint complex )と呼ばれています(図1)。

 

この三関節複合体が、頚椎から腰椎まで24の椎骨と仙骨の間、隣り合う椎骨間すべてに存在し(第1・第2頚椎間は異なる構造ですが)、脊椎全体として協調のとれた大きな動きをもたらす役割を担っています。

 

椎間板は線維性軟骨とゲル状の髄核で構成される特殊な関節ですが、椎間関節は肩や膝など一般の関節と同じ構造を持っています。すなわち、骨同士が接触する部分には関節軟骨が存在し、関節の周囲は関節包という袋で覆われています。この関節包には痛みを伝える神経が分布しています。

 

腰椎の動きにより関節包やその内部の構造が椎間関節に挟み込まれることがあり、これが急性腰痛の原因の一つと言われています。前屈みから不用意に腰を伸ばしたとき、ズキッとくる激しい痛みが走り動けなくなる、典型的なギックリ腰です。

また、加齢とともに椎間関節も「変形性関節症」を起こし(図2)、慢性腰痛の原因となります。この場合も体を動かしたときにズキッと痛みが生じます(図3)。

 

すなわち、椎間関節の痛みは急性でも慢性でも体を動かした瞬間にズキッとくる鋭い痛みが特徴です。痛みは主に腰部に感じますが臀部や大腿外側まで響くこともあります。

 

多くの場合腰を伸ばす(反らす)動きで痛みが誘発され、とくに痛みのある側、たとえば左の腰痛は腰を左後方に反らすときに生じます(図3)。椅子から立ち上がる動作や寝返りでも痛みが起こります。

うつぶせの状態で背骨の外側2センチほどの部位(椎間関節に一致するポイント)に明らかな圧痛を認めるとほぼ診断は確実です。注意深く触れると多くのケースで深部にしこりを触れます。関節周囲の炎症による組織の腫れだと考えらます。

 

ペインクリニックのなかでも脊椎疾患を専門的に治療する施設ではX線透視透視下に行う「椎間関節ブロック」という治療が一般的です。これはレントゲン透視を行って圧痛のある椎間関節を確認したのち,その関節内に直接薬液を注入する方法です(図4)。この方法は椎間関節症に対する強力な治療法であるとともに、これによって痛みが軽減すればその関節が原因の痛みであるという診断ができる「機能的診断法」でもあります。

 

慢性的な椎間関節症の場合でも関節包や周囲の炎症が治れば痛みは軽減します。薬液注入による効果が一過性の場合は,椎間関節を支配する小さな神経を高周波熱凝固法という方法で選択的に凝固して効果を持続させることもあります。

 

このように,椎間関節症による腰痛は体を動かすときにズキッとくる痛みです。前かがみや長時間の座位でジワッと重だるく痛む椎間板症とは対照的です。しかし,両者が合併している患者さんも多く,その場合,椎間関節ブロックで動くときの鋭い痛みがとれた後も深部の重苦しい痛みが残ります。ひきつづき硬膜外ブロックを反復するとこの椎間板症の痛みも軽減します。

​図1 三関節複合体

図2 椎間関節の変性

図3 腰を反らすと痛い

図4 椎間関節ブロック